1989-12-01から1ヶ月間の記事一覧

ジルフィンの指輪について

「ジルフィンの指輪」は、かなり昔(高校生の頃)に書いた原稿を、大学に入ってPCを買ったもので打ち直し&リライトしたもので、私の書いた小説の中で最も古いものの一つです。 それだけに、今読み返すとあれもこれも未熟で、正直地べたに転がってジタバタ…

ジルフィンの指輪(1)

私がこれから語る物語は、教訓や、処世訓を残す物ではないし、まして資料的な価値を持った物でもない。なぜこの話をするのかと問われると、返答に窮するのだが、私が人にこの話を聞かせたい、という内なる欲求以外に理由は見あたらない。 私は、とかく感傷的…

ジルフィンの指輪(2)

私の危惧に違わず、彼らは追手を掛けた。殆ど休みもなく我々は逃走を続け、敵の斥候を何度か倒したが、二日目の夕刻、道もない岩場で新たな斥候に見つかった時、私は覚悟を決めた。私も馬も、そして何よりもイリリアが体力の限界にきていた。イリリアは、じ…

ジルフィンの指輪(3)

私が、その人に出会ったのは、二年前の今ごろの事です。ちょうど、故郷に帰るために、このグラム山脈を越えようとしていたときです。いつものように、この山脈が雪に閉ざされる前に、越えようと思っていたんですが、その年は特に寒気が強くて、山道の途中で…

ジルフィンの指輪(4)

イリリアは、息を詰めて聞いていたのか、はーっと長いため息をもらした。 「いい話し………なのかしら。」 彼女の言い様に、私は自嘲気味に肩をすくめた。 「私にも、どうなのか分かりません。」 「でもね、」 イリリアは、私の手を握って、私の目を、震える瞳…

ジルフィンの指輪(5)

「私は、かつて、豊かな草原の国、緑なす丘の集う国、ロンダリアの王だった。もう憶えているものとていない、遥かな昔の事だ。わが国は豊かで、馬を駆る我らは、自由で、力強く、我らの日々は喜びに満ちていた。だが、我らの繁栄を快く思わぬものがいた。南…

ジルフィンの指輪(6)

私が目を覚ますと、そこは先のホールだった。辺りの様子はあまり変わらなかったが、明かりだけは消えていた。私たちはしばらくそこで寝ていたようだった。私は、傍らのイリリアを揺り起こした。彼女はゆっくりと目を開けた。 私たちは、暫く、その場所で身を…