1982-12-01から1ヶ月間の記事一覧

運命の銃声は三度響くについて

以前、別名義でとある場所に書いた小説の断片をこちらに移転して安置します。 ハードボイルド風無国籍ガンアクションを書きたかったのだが、思わせぶりな書き出しにもかかわらず本筋を全く考えていなかったためわずか2話で断念。 もし続きを書くとしてもリ…

運命の銃声は三度響く(1)

この町に足を踏み入れるのは、たぶん二年ぶりだと思う。 辺りには相変わらず濃い霧が立ちこめているし、コートにまとわりつく湿った空気のにおいは港からの潮の香りをかすかに含んでいる。港町独特の夜の静寂。熱のひいた流行病の患者のような、気怠い沈黙。…

運命の銃声は三度響く(2)

琥珀色のバーボンを、ちびちびと喉に流し込んでいく。鼻孔へ抜ける香りと、胸元を灼くアルコール。 トムが来るまで、まだしばらくかかりそうだ。カウンターの向こうでは、マシューが渋い顔でグラスを磨いている。そこだけ全く時間が流れていないような、記憶…