1982-12-30から1日間の記事一覧

運命の銃声は三度響く(1)

この町に足を踏み入れるのは、たぶん二年ぶりだと思う。 辺りには相変わらず濃い霧が立ちこめているし、コートにまとわりつく湿った空気のにおいは港からの潮の香りをかすかに含んでいる。港町独特の夜の静寂。熱のひいた流行病の患者のような、気怠い沈黙。…