表紙

こちらのblogは、id:chonの書いた小説やその設定資料の置き場になっております。 完結した短編類 他所様に投稿させていただいた作品の再収録 過去に執筆した旧作類 思いついて書き散らかしてみたけどお蔵入りの作品群 などを安置しております。 読み方 各作…

更新履歴

2008/03/23 「思い通りにいかないのが世の中なんて割り切りたくないから」追加 2008/01/13 「米内ですがハルノートを受諾しますた」更新 2007/12/2 「米内ですがハルノートを受諾しますた」更新 2007/08/19 「米内ですがハルノートを受諾しますた」更新 2007…

Wiz.hackについて

迷宮探索物を書きたくなって、勢いだけで書けるところまで書いた物。ほんの触りしかないのは、熱しやすく冷めやすい筆者の性格を良く表している。 確か、「ソードアート・オンライン」(第一部)を読み終わって急にやる気が盛り上がったんだと思う。ただ、「…

Wiz.hack (1)

その日、俺はちょっと機嫌が悪かった。 端的に言うと、ムカついていた。 訳は後で詳しく説明するが、身近な女二人が、俺のペースをいいようにかき回してくれたのだ。 何度も落ち着こうとしたが、そのたびに、普段気の強うそうな女が目に涙を浮かべて青ざめた…

龍狩人について

こちらに掲載している作品の中では一番続きを書く可能性があるもの。 龍王に太刀打ちできるのが龍王の一族しかいなかったら、龍王の子供をさらって勇者に仕立てたりするかも……というコンセプト。 んで、主人公は龍王に勝ったものの、それによって引き起こさ…

龍狩人(序章)

あの伝説的な戦い、竜王バルナグと龍斬皇エリフの一騎打ちと竜王の最後、そして、竜王の呪詛によって起こった天変地異、その一連の事件からすでに70年以上の月日が流れている。今となっては、ほぼすべての関係者が来世への階を上っており、当時の真実を解…

龍狩人(1)

第1章 坑道の小戦姫第1話 オルザンク山と言えば、大陸西方のヨロテア地方の中でも最も西に位置する峻厳な霊峰であり、昔は行者や導師の修行の場として知られていたものである。しかし、”滅びの日”と呼ばれる天変地異の結果、三方を切り立った崖に囲まれる…

龍狩人(2)

第2話 オルザンク山の麓を覆う森林は、ヨロテア地方と半島を隔てる地峡まで十里あまりも続いている。鬱蒼と繁る落葉樹の森は、僅かな隙間から日の光を漏らす他は、その枝の下を薄暗い暗闇に覆っている。太古の昔から変わらぬ営みを続けてきたように思われる…

龍狩人(設定メモ)

人物設定龍呪皇エリフ かつての龍斬皇エリフであり、竜王バルナグを倒し、結果としてこの世にさらなる混乱をもたらした張本人。過去の行状については、年を経たことによる風化・誇大化の影響もあって毀誉褒貶様々であるが、すでに伝説上の人物であり、一部の…

ジルフィンの指輪について

「ジルフィンの指輪」は、かなり昔(高校生の頃)に書いた原稿を、大学に入ってPCを買ったもので打ち直し&リライトしたもので、私の書いた小説の中で最も古いものの一つです。 それだけに、今読み返すとあれもこれも未熟で、正直地べたに転がってジタバタ…

ジルフィンの指輪(1)

私がこれから語る物語は、教訓や、処世訓を残す物ではないし、まして資料的な価値を持った物でもない。なぜこの話をするのかと問われると、返答に窮するのだが、私が人にこの話を聞かせたい、という内なる欲求以外に理由は見あたらない。 私は、とかく感傷的…

ジルフィンの指輪(2)

私の危惧に違わず、彼らは追手を掛けた。殆ど休みもなく我々は逃走を続け、敵の斥候を何度か倒したが、二日目の夕刻、道もない岩場で新たな斥候に見つかった時、私は覚悟を決めた。私も馬も、そして何よりもイリリアが体力の限界にきていた。イリリアは、じ…

ジルフィンの指輪(3)

私が、その人に出会ったのは、二年前の今ごろの事です。ちょうど、故郷に帰るために、このグラム山脈を越えようとしていたときです。いつものように、この山脈が雪に閉ざされる前に、越えようと思っていたんですが、その年は特に寒気が強くて、山道の途中で…

ジルフィンの指輪(4)

イリリアは、息を詰めて聞いていたのか、はーっと長いため息をもらした。 「いい話し………なのかしら。」 彼女の言い様に、私は自嘲気味に肩をすくめた。 「私にも、どうなのか分かりません。」 「でもね、」 イリリアは、私の手を握って、私の目を、震える瞳…

ジルフィンの指輪(5)

「私は、かつて、豊かな草原の国、緑なす丘の集う国、ロンダリアの王だった。もう憶えているものとていない、遥かな昔の事だ。わが国は豊かで、馬を駆る我らは、自由で、力強く、我らの日々は喜びに満ちていた。だが、我らの繁栄を快く思わぬものがいた。南…

ジルフィンの指輪(6)

私が目を覚ますと、そこは先のホールだった。辺りの様子はあまり変わらなかったが、明かりだけは消えていた。私たちはしばらくそこで寝ていたようだった。私は、傍らのイリリアを揺り起こした。彼女はゆっくりと目を開けた。 私たちは、暫く、その場所で身を…

レスギンの獅子について

「レスギンの獅子」は、「ジルフィンの指輪」と同じ主人公、マルク・レヴィス・グラムソーティスの登場するファンタジー小説です。背景世界は、中世末期〜ルネサンス期程度の文明を持ったファンタジー世界ですが、異種族や魔法などは比較的控えめに設定して…

レスギンの獅子(承前)

砦の中には乾いた飢えとすえた恐怖の臭いが立ちこめていた。もはやお馴染みになったその臭いにたじろぐこともなく、青年はゆっくりと連射弩に太矢を詰め直し、伸びてきた顎髭をうっとうしそうに二三度掻いた。銃眼から砦の外を見やると、城壁の下からは砦の…

レスギンの獅子(1)

レスギン砦は大グラム山脈の最南端を背にして聳えている。その偉容は、ラタール・イシャー・マイソミアの3地方をなんとも不遜な眼差しで睥睨していた。眼下に広がるイシャーとラタールにまたがる丘陵地帯は、鬱蒼とした木々に覆われて緑の波を描き、その先…

レスギンの獅子(2)

マルクが王都ソーリアを旅立ったのは、年が明け、新年の大聖祭で都市中が賑わっている最中だった。黒衣の宰相・ラタス伯の命令は謎めいたもので、ラタールである人物に内密に接触し一通の封書を手渡せというものだった。宰相の名高い『眠り獅子』が鑞に刻印…

レスギンの獅子(3)

密使はマルクと幾分も年齢の違わない、若い女性だった。マルク自身も勅使などと言う堅苦しい役目が似合うとは思えなかったが、ルミエラ=フィエス=ガリアンテと名乗ったこの美しい女性ほど密使と言う無粋な言葉が似合わない人はいなかった。姓名を聞いて、…

レスギンの獅子(4)

公女の申し出を断ってからしばらくのあいだ、ラドビクは事ある毎にマルクに喰ってかかり、一日中マルクに聞こえるように愚痴った。彼曰く、世の中には礼を知らない騎士がいるだの、心のない石ころが自分の主査正騎士だなんて不公平だの、とにかくこの世の不…

レスギンの獅子(5)

家令はマルクとラドビクに続きの客間をあてがった。二人は荷物を運び入れて貰うと、普段着に戻って早速砦の中を見て回ることにした。もっともラドビクは、数刻を経ないうちにたちまち飽きてしまった。 「ラドビク、この砦を守備するとしたら兵が何人必要だと…

レスギンの獅子(6)

レスギン砦での第一日目はマルクにとって満足のいくものとは言えなかった。夕食は一応城の騎士達と一緒にとったが、食事の不味さもさることながらラタール人騎士達の愚劣さには心底腹が立った。 「ソロスの騎士殿はなかなかの男前ですな。さぞや女どもを泣か…

レスギンの獅子(7)

マルクの客間にラドビクが飛び込んできたのはそれから二刻も過ぎて、窓の端に西日が差し込みはじめる頃だった。 「ソーティス卿!何をやらかしたんですか、一体!」 半ば怯え顔のラドビクは続き部屋の扉を慎重に続けると小声でまくしたてた。 「いま、城代の…

レスギンの獅子(8)

夜半過ぎの客室からの眺めには、四方の木々の影の中にあまたの篝火が見えた。マルクはその篝火の数を概算した。兵の数は三千を下らないだろう。おそらくは四千を超える兵がいると考えて間違いない。敵の正体は判然としていなかったが、これだけの兵を派遣す…

レスギンの獅子(9)

「そ、その・・・ソーティス卿。話はご理解いただけたかと思いますが・・・・。」 マルクは表情を変えずに城代の揺るぎがちな瞳を見据え続けた。城の会見の間には城代の他にダハルとリノンの二人の騎士と数人の従者がいるだけだった。入り口を数人の兵士が固…

レスギンの獅子(10)

「おおいっ!一体何のつもりだてめぇらっ!!」 準備を済ませたマルクが馬を歩ませながら城門に近づくと、二百名を越える兵がごった返していた。その向こうからはパーボの怒鳴り声が聞こえてきた。マルクは集団から離れて並んでいるアンセルとモランを見つけ…

レスギンの獅子(11)

レスギン砦は南ラタールを覆うエセルの森林の外縁に位置する。レスギン砦の眼前で森は草原に姿を変え、西に大地を登り進むに連れて岩砂漠へと姿を変えていく。砦から出た一団は森に沿って進み、粛々と草原の中に迂回して配置についた。夜半過ぎ、闇の中に下…

レスギンの獅子(12)

陣営の中はだいぶ混乱していた。今夜の奇襲が効いているのだろうが、二人は人目に触れる事無く潜入することが出来た。マルクは必要に迫られてこの手の潜入を何度もした事があるので、いわばお手の物だったが、キャラはそれ以上に手慣れていた。マルクを普通…