翼のない天使(表紙)

「カンベ、教えて。」

「何をだ?」

サラは真剣な眼差しでカンベを見つめた。その瞳の中にはもはや、生への恐れも死へのためらいもない。あるのはただ、隠れもない意志。ただ、この人の側にいたい。

「人を、殺す方法を。」

 

 魔都上海。霧に煙る栄光と屈服の町をさまよう少女、サラ。幸福な毎日、暖かな家族のぬくもり。すべてを失った少女を死の手からすくい上げたのは、奇妙な日本人、暗殺者カンベだった。この出会いが、少女を激しく変えてゆく。