Black Daughter(用語解説)

Black Daughter 用語解説



 

アサルトフレーム Assault Frame , AF

 広義には5mを越える多関節戦闘兵器の総称。狭義には人型戦闘兵器を指す。その多くは15m級の人型戦闘兵器であり、二脚以上の擬肢とマニュピレータ、戦闘用の固定武装や外部兵装、機動用のスラスターやホバリング装置などを備える。15m級人型兵器をアサルトフレーム、四脚以上の多脚戦車を”ランドフレーム”、多関節航空機を”エアロフレーム”水中用戦闘兵器を”アクアフレーム”と呼ぶこともある。

 稼働原理はかなりシンプルで、DETTS(珪素系化合物の電位差による反応を利用した駆動装置)で全身を動かし、緊急行動時には噴射剤や火薬なども併用している。光神経素子を利用した制御系によって、多くの場合搭乗員一名で運用可能である。また、ナノバイト技術の応用である程度の自己修復機能を持つ。主動力源は通常リンゲルバッテリーだが、大出力兵器の運用を行う場合はヘイゼルホフ炉等が併用される。

 アサルトフレームは空白期以前にすでに実用となっていたものだと見られており、現在のアサルトフレームはその復興だといわれている。空白期以後の最初のアサルトフレームはGEC/Aetari(現Lexus-GECM)の開発した”ランバルド”であり、その実用化モデルが”ヴァンダル(1)”である。”ヴァンダル(1)”は、それまで戦車や航空機が主力であった戦場において高い走破性と汎用性で評価され、アサルトフレームは一躍戦闘兵器の主役へと上り詰めることとなった。

 現在、アサルトフレームのAIC登録台数は60,000機以上に上る。

 

ハウンド Hound , HD

 四脚以上の擬肢をもつランドフレーム、とくに、多脚戦車型LFの俗称。獣猟犬の意味だが、犬よりもカニや蜘蛛を思わせる機体も多い。元々戦車メーカーであったAqura系のTarantやSEGU系のMayfairなどのメーカーが有名。特に、Mayfairの傑作機・ブラッドとその派生型には猟犬の名前が冠され、ハウンドシリーズと通称されたことからこの名が出ている。V2C仕様の固定武装を使用できるものが多い。

 

ランドフレーム Land Frame , LF

 地上用アサルトフレームの総称。主にハウンドタイプの多脚歩行戦車を指すが、ホバー機動をメインとする浮遊砲台や地上砲艦が擬肢や格闘用腕を備えたタイプのアサルトフレームなども含まれる。ランドフレームと呼ぶ場合は通常二足歩行人型兵器をアサルトフレームと呼称し、飛行するものに関してはエアロフレームと呼称する。

 

エアロフレーム Aero Frame , AeF

 軍用航空機に起源をもつ航空アサルトフレームの総称の一つ。他にウォーバード、ファルコンなどの呼び名があり、通称は一定でない。航空AFの長所は高い速度と高度にあることは言うまでもないが、戦場での制圧能力の低さと作戦行動時間の短さから支援兵器の役割に留まっている。偵察や短時間の制圧などに主に使われている。

 

アクアフレーム Aqua Frame , AqF

 水上、水中用のアサルトフレームを指す言葉。AICレギュレーションにより水中、水上の戦闘が限定されていることと、専用設計が必要なことから、カテゴリーとして成立するほどの機種数はない。その性質上他のアサルトフレームとの互換性が低く、また機体が大きいものが多いのが特徴。

 

ヴァンダル-1 Vandal-1 , V1

 GEC/Aetariよりリリースされていた、空白期以後最初の実用AF。総生産機数30.000機を越える、第1世代AFを代表する傑作機でもあった。戦闘兵器の歴史を一機で書き換えたといえる機体。

 最大の特色とされていたのは、その汎用性の高さであったが、むしろこれはヴァンダル単体の性能ではなく、人間型アサルトフレーム全体の特色と言っていい。現在でも評価されているのはその追従性の高さ。そのため、今でも訓練用に使われている機体が多い。

 ヴァンダル-1はリリース当初、装甲の貧弱さが指摘されたが、ヴァンダル-1ES以降は増加装甲と関節部の強度が改善された。改良型はEE、PE、AST等が作られ、派生型のオストゴート(OstGoth・重装白兵型)、エストゴート(EstGoth・偵察型)なども生まれた。

 ヴァンダルシリーズのCOSはソフトウェアメーカー・BySquareが担当。BS-COSとして知られるようになり、以後アサルトフレーム用のCOSとして主流となっていった。

 ヴァンダルの名は紀元4世紀のゲルマン民族の部族名から取られており、GEC系のアサルトスーツには以降同様の名前が命名されることとなった。設計メーカーのAetariはイタリア系で、このコードネームに不満があったのか、当初開発チーム内では”ユリウス(Julius)”と呼ばれていたという逸話がある。

 

ヴァンダル-2 Vandal-2 , V2

 空白期以後最初の実用アサルトフレーム・ヴァンダルの後継として発表され、現在でもLexusより販売されている機体。ヴァンダルの後継モデルとしての位置も重要であるが、その後のアサルトフレームの方向性を決定した機体として有名である。第2世代アサルトフレームの代名詞。

 ヴァンダルの成功はGECの軍事企業としての名声を上げたと同時に、他の兵器メーカを刺激することともなった。そのため、ヴァンダル登場より数年後には、多種多様なアサルトフレームが戦場に現れることとなった。しかし、整備パーツから弾薬に至るまでメーカ間で別個のものを使っていたため、必然的に稼働率が著しく落ちる結果となった。傭兵業界ではアサルトフレーム離れも起こりつつあった。

 GEC/Aetariがヴァンダルの後継モデル(開発コード”フランク”)を計画した際に、もっとも重視したのは互換性の高さであった。そのため、それまで完成品としての設計のみを行っていたアサルトフレームを、コクピット・リアクター・腕部フレームといったパーツ単位で設計し、それをつなぎ合わせるジョイント部やソフトウェアを公開規格としたのであった。(ブロッカブル構造)

 当初この試みは整備手順の煩雑さから全く受け入れられず、GECは経営不振からLexusに買収されることとなったが、その後COS側の強化や規格精度の上昇などが行われて、次第に互換パーツが使われて行くようになったのである。

 その後、”フランク”改め”ヴァンダル-2”としてLexusより再度発売されたこの機体は、ネームバリューもあって空前の人気機種へと成長していくこととなる。”ヴァンダル-2”はLexusの方針で更なる規格公開を行ったため多くの互換機が登場し、これ以降の多くのアサルトフレームは”ヴァンダル-2互換”を謳うこととなった。

 ヴァンダル-2自体は発売当初より、ES・OS・HSSの3機種のみのシンプルなラインナップであるが、ヴァンダル-2互換アサルトフレームやパーツによって無数とも言えるバリエーションがある。

 

ヴァンダル-2互換 V2 Compatible

 ヴァンダル-2で使用しているパーツとの互換性があることを示す表示。V2Cとも書かれる。具体的には、機体各部の関節単位でのジョイント互換(GEC-J4250)、AIC認定兵装互換(AIC-Fi、AIC-Mv)、BS-COS Application Joint V2C (AJX)など多数の基準のどれかに従っていることを示す。V2Cパーツだからといってもその精度・性能はピンキリである。

 

第1世代アサルトフレー

 ヴァンダル-2以前のアサルトフレームを総称してこう呼ぶ。ブロッカブル構造を持たず、現在のアサルトフレームより高価なのが特徴。現在でも第1世代AFを生産している会社はいくつか有るが、特殊目的用や骨董・芸術品としてのものがほとんどであり、主流とは言えない。

 

ナノバイト Nano-Byte

 多様な目的に使用されるナノマシン。AFの自己診断・修復用や医療薬品のDDS(Drag Delibary System)あるいは再使用洗剤など広範囲に渡って使われている。

 アサルトフレームでの使用は、リンゲル循環系と光神経素子の整備・修復用に限られており、装甲や機体フレームが破損した場合に使用できるものではない。

 

DETTS

 Direct embeded TOE Trail Setの略。珪素系の化合物がある種のリンゲル樹脂と反応するときに電位差を生じることから生まれた、一種の人工筋肉。一素子辺りの発生エネルギー量が多く、また、効率が高く長時間の稼働が可能なためアサルトフレームの全体の駆動機構に使用されている。ただ、原理上瞬発性には多少欠けるため、より速い機動のためには噴射剤を使用するスラスターや火薬カートリッジなどが併用されている。

 

リンゲルバッテリー Linger-Battery

 DETTSを駆動させるためのリンゲル樹脂タンクと、それを送り出すためのポンプ機構を積み替え可能な燃料カートリッジにしたもの。ポンプ機構にはより冗長性の高いDETTSが使用されている。用途や機種にも因るが、通常のアサルトスーツはリンゲルバッテリー自体を交換せずに二週間〜一ヶ月程度は連続作動が可能である。

 

ヘイゼルホフ炉 Neiman-Hazerkov-Reactor

 トカマク−プラズマ型に起源をもつ小型化された核融合炉。アクセル・ナイマンとミゲロ・ヘイゼルホフの二博士が案出した電磁容器内にプラズマ化したガスを吹き込む課程は原始的な核融合炉と同じである。小型化されたとはいえ扱いが難しいため、AFに標準装備されるまでには至っていない。主に大口径の荷電粒子兵器の電力供給に使用されている。

 

GEC/Aetari

 空白期以前の人型戦闘兵器から現在のアサルトフレームを再生し、なおかつ規格化を推し進めた企業。しかしながら、資本規模が小さいことや影響力が他の巨大企業には及ばなかったことから、ヴァンダルの後継機”フランク”の販売不振からLexusに買収された。現在ではLexus-GECMという一部門企業となっている。また、買収時にヴァンダル-2開発チームがBySquareへと移籍したと言われている。

 

Lexus

 世界6大企業のうちで、もっとも資本力を持つ巨大多国籍企業。ユーラシアの多くの地域に権益と影響力を持つ。特に重工業の生産力では世界第一位の企業と考えて間違いない。企業としては保守的かつ着実な方向性を好む体質で、極端な新技術開発には積極的ではない。

 

BySquare

 ヴァンダルのCOSを設計したことから軍需産業に大きな影響力を持ち、BIG6の一角を担う巨大企業。元々家庭用コンピュータやバイオをはじめ重工業系の産業まで幅広い分野で大きなシェアを持っていたが、軍需産業ではBIG6の中でも下位にいた。現在、戦闘兵器の制御系についてはほぼ独占状態にあり、ヴァンダル-2以降のトレンドを作るのはこの会社であるといわれている。

 

SEGU

 BIG6中堅の巨大企業。ナノマシンテクノロジーに秀でる。軍需産業メーカとしてはランドフレームに定評がある。

 

Aqura

 BIG6中技術力にもっとも秀でている企業。アサルトフレームにおいても優秀な機体を多く生み出しており、特にエアロフレームでは他に抜きんでている。

 

Takenaka

 重工業系、特に造船や建築分野を得意とする巨大企業。アサルトフレームメーカーとしては堅実な路線を打ち出しており、信頼性の高さで定評がある。

 

AIC

 Assault Information Consortiumの略称。AICは本来戦闘時の環境情報を提供する一企業であったが、各地での企業間紛争の増加によってより大きく公正な組織が必要とされたため、六大企業間での協定に基づいて傭兵の管理・戦闘情報の管理・戦闘レギュレーションの管理などを行う組織へ改編された。その後、紛争解決の手段であった戦闘がショーアップされ、一種スポーツ的な位置づけになるに連れて発言力を増し、現在ではBIG6に対しても独自の権威をもつに至っている。

 AICは傭兵に対して教育・情報提供・斡旋などの各種サービスを行うと同時に、ライセンス発給により管理している。

 

長船

 サードパーティーの兵器生産メーカー。主にアサルトフレーム用の白兵戦兵器を生産している。社名は16世紀の刀工の村・長船から。

 

空白期

 原因不明の大破壊と、その後に続いた技術的退行期を指す。概ね2130年代〜2230年代までの約一世紀を指す。この年代はあまり正確とは言えず、はっきりしているのは空白期が終わったのが2140年以降であると言う事実のみである。

 

ランク lank , lanker , 1st , 2nd , 3rd , 4th

 AIC(Assault Information Consortium)が管理する傭兵のランキング。ランキングシステムは、登録者と登録機体に対してデータ提供を行うと同時にデータを収集、リアルタイムでの戦績を公開・管理している。個人ランクとチームランクの二種類があり、個人ランクにはAF・LF・AeFなどの区分もある。

 ランキングは通常「30,233位」という風に表示されるが、かつて16進表記だった時期の名残から、15位までを1stランカー、255位までを2ndランカー、4,095位までを3rdランカー、それ以下を4thランカーと呼ぶことが多い。なお、登録者総数が約5〜6万人であるため、5th以下は(今のところ)存在しない。

 ランキングの変動を決めるのは戦績ではなく、ランカーチケットを買う客=一般大衆である。このランカーチケットは一種の人気投票券であると同時に株券としての側面も持っている。つまり、より多くの支持を集めたパイロット/チームがより上位となるのだが、その評価の基準となるデータはAICが提供している。また、ランカーチケットは順位により発行数が厳密に決められており、額面の100万倍以上の金額のものはメガチケット、10億倍以上のものはギガチケットと呼ばれる。過去に一度だけテラチケットが販売されたこともある。

 上位ランカー(2nd以上)は世界的な有名人であり、機体のスポンサードや戦闘の中継なども多くなるため、下位ランカーの羨望の的となっている。

 

5th

 ランク登録さえ出来ないヒヨッコのAF乗りや、腕の悪いパイロットを蔑称するときの言い方。最大限の侮辱と言っていい。

 

ランバルド Rangbald

 ヴァンダル-1の原型となった機体。詳細は知られていないが、空白期以前の設計乃至は機体をコピーしたものだと言われている。

 

NE

 New-Euro(新ユーロ)。世界通貨の一つ。1NE = 60HY = 0.2Eq。

 

HY

 Hongkong-Yen(ホンコン-円)。世界通貨の一つ。主にアジアで流通。

 

Eq

 Eque(エキュー)。世界通貨の一つ。傭兵業界での支払いは通常Eqで行われる。

 

HMD

 Head Mount Display。ヘルメットスクリーン型と網膜投影型がある。

 

BS-COS

 BySquare Combat Operation SyntheSysの略。アサルトフレーム制御基本システム(COS)の中でもっとも普及しているもの。

 

キャメロン

 BySquare Industryの誇る重量級AF。V2C機ではあるが、かなり独自の部分もあり、BySquareではこの機体の規格を大型機用の規格としてV2C-Xの名で普及させようとしているが、大型AFの需要がそれほど多くないために苦戦している。重心の低い特徴的なデザインと退弾性の高い装甲で非常に大きく見える機体である。

 

タイフーン

 BySquare Industryの最新鋭AF。ミドルサイズのヴァンダル互換AFで、レイヴンタイプの足を装備しているのが特徴。ジャンプ性能を重視しており、短距離の滑空能力もある。